2019.10.21

これは知っておきたい!結婚式BGMの著作権8つのポイント

著作権のポイントを解説

 

 

結婚式の雰囲気を彩る演出の一つが、BGMだと思います。

自分たちのこれまでの想い出やゲストのことを考えて、どのシーンでどんな曲を使おうかな?と考えるだけでワクワクしますよね!

でもご存じでしょうか?結婚式で楽曲を使う場合、所定の手続きを踏まないと「著作権侵害」になることもございます。ここでは、結婚式で使う楽曲に関する「著作権」と、正しく楽曲を使用する方法について解説していきます。

 

※本記事は、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)や一般社団法人音楽特定利用促進機構(ISUM)のサイト情報をもとにまとめております。

 

この記事のポイント

●結婚式BGMで使う楽曲をこれから選ぶ新郎新婦さん向け

●結婚式で使う楽曲に関する「著作権」の基本がわかります

 

 

① 結婚式のBGMで著作権?

 

結婚式場が決まり、準備やお打ち合わせが進む中で、式場の方からBGMに関して「著作権の関係で、市販CD(原盤)でご用意ください」と言われることがあります。すでに言われている方もいるのではないでしょうか。

 

「そうなんですね、分かりました」とその場では言ったものの、結婚式というプライベートな場で音楽を流すだけなのに、どうして著作権が関係あるの?と、思ってしまう花嫁さんもいるはず。

 

著作権が発生するポイントは、結婚式で音楽を流すこと自体が、法律的に「私的利用」とみなされるかどうか?にあります。

 

著作権法では以下のように「私的利用」を目的とする場合は、楽曲を許可なく使ったりしたり複製しても全く問題ありません。

●自宅で音楽(CD)を聴く

●購入した音楽(CD)をCD-Rに映して聴く

これは皆さんも経験があるのではないでしょうか。

 

しかし、結婚式は、新郎新婦の親族だけでなく、多数のゲストが参列し、一度に同じ音楽を聴くことになるので、式場の商業利用としてみなされてしまい、「私的使用」の範囲外となってしまうのです。

 

そのため「著作権」が発生してしまいます。

 

 

 

② そもそも、楽曲の「著作権」っていったいなに?

 

「著作権」とはいったい何なのでしょうか?

 

1枚のCDには、作詞家・作曲家、レコード製作会社・アーティストが関わっています。

彼らの権利を守るためにあるのが「著作権」と「著作隣接権」というものです。

著作権といっても、細かくいうと「著作権」と「著作隣接権」の2つ存在するのです。

 

「著作権」とは、作詞家・作曲家など楽曲を作る側の人を守る権利を指し、

「著作隣接権」とは、レコード製作会社や楽曲を演奏する人(アーティスト)など音楽を伝える側の人を守る権利を指します

 

すでに説明したとおり、結婚式で楽曲を使うことは私的使用の範囲外なので、楽曲を使用する場合は、これら両方の権利の処理手続きが必要になります。

具体的には「著作権を持っている人」から許可をもらい、その楽曲を使うための使用料(著作権料、著作隣接権料)を払わなければなりません。

もし結婚式で勝手に楽曲を流したり演奏したりしたら、法律違反と見なされます。

ご自身の大切な日に、法律違反していたら困りますよね?

自分の好きな楽曲を法的にも安心して結婚式で使うにはどうしたらいいか?

それを細かく見ていきたいと思います。

 

 

③ 著作権の手続きってどのようにするの?

 

楽曲を利用する方法には「演奏利用」と「複製利用」の2種類があります。

 

「演奏利用」とは、

●チャペル・披露宴での演奏や歌唱をする生演奏

●披露宴でのBGM用のCD再生や余興のカラオケ利用の録音物の再生

●新郎新婦のプロフィールビデオの上映

などの場合であります。

 

「複製利用」とは、

●披露宴で利用するBGM用CDの製作などBGM用の録音物、

●プロフィールビデオやエンドロール用のDVDの製作など演出用の録音・録音物、

●結婚式や披露宴の模様を収録した記録用DVDの製作

などの場合であります。

 

そのため、演奏利用と複製利用、どちらの方法で楽曲を利用するかによって、著作権の手続きのフローが異なります。

 

「演奏利用」の場合は、作詞家・作曲家の権利を守る権利である著作権の処理手続きが必要で、「複製利用」の場合は、この著作権に加え、レコード製作会社や楽曲を演奏する人(アーティスト)など守る権利である著作隣接権の処理手続きが必要となります。

 

発生する権利としては下記のようになります

①「演奏利用」=著作権

②「複製利用」=著作権+著作隣接権

 

そして手続きとしては、

「演奏利用」の場合は、ホテルや結婚式などの施設がJASRAC(日本音楽著作権協会)に手続きをし、

「複製利用」の場合は、新郎新婦が依頼をした録音・録画製作事業者や結婚式場の映像音楽制作部門から手続き代行団体(ISUM)がその手続きを委託し、JASRACや日本レコード協会(RIAJ)に手続きを進めます。

※ISUMとは、ウェディング分野に限り「著作権」と「著作隣接権」に関する手続きを代行してくれる一般社団法人です。

 

もちろん、場合によっては、新郎新婦から直接JASRACなどの該当機構に手続きをしたり、映像製作事業者から代行団体を経由せず手続きを進める場合もありますが、ISUMへの申請は下記などのブライダル事業者に限定されています。

●ホテル

●結婚式場、専門式場

●ウェディングムービー(映像)制作会社

など

 

 

④ 挙げられる式場がJASRACと契約しているか確認をしよう

 

実は多くの結婚式場やウェディング関連団体などは、演奏権の使用(演奏利用)のために、あらかじめJASRACと包括的な契約を結んでいるため、演奏利用の許諾を得ています。つまり、作詞家・作曲家など楽曲を作る側の人を守る権利の「著作権料」については、包括契約でその使用料をお支払いしています。

ただし、結婚式をメインとして営んでいない施設などは包括契約を結んでいない場合があるため、そのような施設は、結婚式のお申込みが入る度に、手続き処理と使用料の支払いが必要となるのです。

そのため、ご自身が挙げられる式場がJASRACなどの著作権利団体と契約を結んでいるか、確認をしましょう。

ちなみに、その包括契約をしてお支払いしている「著作権料」は、結婚式を申し込んだときのお見積りに記載がある「音響照明利用料」や「会場使用料」という項目の中に含まれており、結婚式場から新郎新婦に請求されており、結婚式場からJASRACに支払われます。

 

 

⑤ 市販CD(原盤)が必要な理由

 

では、なぜCD-Rではなく、市販CD(原盤)が必要と言われてしまうのでしょうか。

それについて見ていきたいと思います。

楽曲を利用する方法には、先ほど申し上げた通り、演奏利用と複製利用があります。

 

披露宴でのBGM用のCD(原盤)の再生は「演奏利用」に含まれ、

披露宴で利用するBGM用CDの製作などBGM用の録音物での再生は「複製利用」に含まれます。

つまり、手続きが必要な著作権は以下のようになります。

 

●CD原盤での再生=演奏利用=著作権

●CD-Rの録音物での再生=複製利用=著作権+著作隣接権

 

そのため、著作権料をJASRACと包括契約を結んで支払っており許諾を得ている場合、①のようにCD原盤を用意するだけで、そのまま再生することができ、著作隣接権の手続きの手間や使用料が発生しなくなるのです。これは式場にとって手間が減るだけでなく、新郎新婦にとっても著作隣接権の使用料が「音響照明使用料」や「会場使用料」として請求させることもなくなるということなのです。

 

一方で、CD-Rに焼きまわしてご用意されると、複製利用となるため、著作権料をJASRACと包括契約を結んで支払っている場合においても、著作隣接権の手続きが別途発生してしまうのです。このような事情があり、式場は「CD原盤でご用意ください」とお伝えすることが多いのです。

 

 

 

⑥ CD-Rの場合でもダウンロードやレンタルCDはダメ?

 

CD-Rなどの録音物も、複製利用の手続きおよび使用料をお支払いすれば、楽曲を流すことは可能です。

しかし、複製する場合には、いくつか制限があるのです。音楽配信アプリからダウンロードしてCD-R焼きまわして再生したり、レンタルCDからCD-Rに焼きまわして再生したりすることは、配信アプリのサービスやレンタルショップ側の利用規約上、禁止されています。あくまでも「私的利用の範囲内」という規約になっているためです。市販されている新品CDもしくは中古CDをCD-Rに焼きまわすことはOKとなります。

とはいっても、実際には式場側のプランナーさんや音響スタッフさんなども、新郎新婦さんが持参されたCD-Rが、ダウンロードしたものから焼きまわしたのか、レンタルCDから焼きまわしたのか、市販されているものを購入されたCDから焼きまわしたのか、厳密にはわからないですよね?そのため、いずれにしてもCD-Rで持参された時点で「複製利用」の手続きが必要となるのです。

 

 

 

⑦ 著作権料っていくらかかるの?

 

では実際に「著作権」の使用料はどれくらいするのでしょうか。

それを見ていきたいと思います。

 

「著作権 使用料」(A)は、JASRACへ1曲400円、もしくは、NexToneへ1曲400円発生します。

※NexToneも著作権利団体の一つ。

 

「著作隣接権 使用料」(B)は、日本レコード協会へ1曲2000円発生します。

さらに、複製利用の場合は、ISUMのシステムを利用して手続き処理をするため、(「著作権 使用料」+「著作隣接権 使用料」)×10%(C)が利用料として発生します。

 

つまり、

演奏利用の場合は「著作権料」=400円/1曲、

複製利用の場合は「(著作権料+著作隣接権料)+(著作権料+著作隣接権料)×10%」=2500円/1曲ほどかかります。

 

たとえば、15曲使う場合、ざっと計算すると、

●CD原盤で用意する場合は、400円×15曲=6000円

●CD-Rで用意する場合は、(400円×15曲+2000円+15曲)+ (400円×15曲+2000円+15曲)×10%=39600円

 

こんなに金額が変わってくるのです。驚きですよね!

これが著作権使用料として音響照明使用料などとして請求されるのです。

 

つまり、利用規約上、違反ではありますが、レンタルCDやダウンロードしてCD-Rに焼きまわすほうが、CD原盤を集めるよりも安いと思いきゃ、結局、複製利用の手続きが発生するので、結果的には大幅に高くなってしまうことがわかると思います。

 

 

 

⑧ 音響照明使用料を確認してみよう

 

結婚式を申し込まれると、式場よりお見積りを頂くと思います。

そこに「音響照明使用料」(式場によっては「会場使用料に含む」など少し異なる言葉かもしれません)があると思います。そこには、この「著作権の使用料」に加え、式場の音響スタッフさんの「人件費」や「機材コスト」などが合計された金額が書かれているので、見落としのないように確認しましょう。

 

 

 

まとめ

 

いかがでしたでしょうか。

これまで、結婚式のBGM事情を「著作権」について触れながら解説してきました。

 

●結婚式BGMは「私的利用」の範囲外となり、著作権が発生する

●著作権には「著作権」と「著作隣接権」がある

●演奏利用の場合は「著作権」、複製利用の場合は「著作権と著作隣接権」の手続きが必要

●ダウンロード音源やレンタルCDは、サービスの利用規約上NG

●演奏利用の場合は400円/1曲、複製利用の場合は2500円/1曲の著作権使用料

 

結婚式のBGM利用には、こんなにたくさんのルールが存在するなんて驚きですね。結婚式で好きな楽曲を流すためにも、不安や疑問を確認して、大切な日を迎えてくださいね。